【藤野英人さん第4回】誰からでも学ぶし、誰の考え方でもサンプルになる

人に興味を持って、いろんな人の考え方を知る

これは商売をする時もとても大事です。さっき、テレビは「タモリ倶楽部」だけ見ていると言いましたが、もう一つ、「龍馬伝」も見てました(笑)。

「龍馬伝」の初期の頃に、岩崎弥太郎が監獄かどこかに閉じ込められて、そこにいたおじさんに商売について教わるシーンがあるんです。「ものの価値というのは、人によって変わる」と言われて、弥太郎は「そうなのか」と手を叩いた。

ものって売買されるし、取引で値段が変わったりする。そこに商売のチャンスがあるんです。ある人にとってゴミであるものが、ほかの人にとっては宝物になることがすごくよくある。それが商売にとってとても大事なことなんじゃないかなあと思うんですね。

で、この『もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら』本でも、『スリッパの法則』でもそうだけど、結局、そういう様々な価値観を持ったいろんな人がいる中で、ある一つの事象があった時に、多くの人はどう思うのかを想像するということがとても大切だと言っているわけです。

やっぱりいろんな人やいろんな考え方を知って、イメージができればできるほど、その幅が広く深くなっていくと思います。

イメージできないことはマネージできないんですよ。イメージするためにはやっぱり語ったり、経験を積んだり、もしくは本を読んだりして、いかに普段からいろんな人の考え方や感じ方をイメージして自分に吸収できるかが大切だと思います。

その最大のカギは何かというと、たぶん関心ですよね。人に関心を向けること。興味の幅をどれだけ増やすことができるか、好奇心の幅を増やすかが大事。

そうすると、誰からでも学ぶし、誰の考え方でもサンプルになる。興味を持って、「あ、この人はこういう考え方をするのか」「こういうふうに思うのか」と知れば知るほど、思考や視点の幅が増えてくるんじゃないかと思いますね。

──、たとえば、「この吉田さんって人はすごく恐怖心が強いな」と思ったら、また単位を作って、「あ、この人は吉田さんの3倍ぐらいだから『3吉田』かな」とか。

そうですね。人って、いろんな感情に支配されていますよね。その中でも不安と恐怖が人の動機になっている。特に不安。不安を自分で解消していける人と、不安がたまっていくタイプの人がいるんですよ。あらゆることに疑心暗鬼になって懐疑的になっちゃう人がいる。

いつも不安な人と、いつも不安がない人だと、見えている風景がまったく違いますよね。だから、この人はどういうタイプなのかを幅広くとらえる必要があると思います。

努力できない人に対する理解も必要

以前は僕、不安に感じる人や弱い人を認めないところがありました。10年以上前ですかね。やっぱり明るくて元気で前向きな人がいいから、暗い人やいつもネガティブなことを言ってる人はあんまり友達にしたくなかった。あと、努力しない人ね。「努力しろよ。努力しないのはおまえのせいだ」みたいなのがあった。

でも、最近は、人っていろんな個性があって、努力できる人もいれば、努力できない人もいると思うようになった。個々のキャパシティーやいろんな制約条件があるからね。そういうことをすごく深く考えなきゃいけないなあと思っています。

努力できるのも一つの才能で、努力できないというのはそういう才能がなかったり、そういうキャパがない、もしくは努力が発動されない環境にあるということかもしれない。よく相手の立場を理解して、話すべきなんじゃないかって思うんです。

昨年の紅葉の時期に、たまたま京都に行って永観堂を見てきたんですよ。

──はい。

永観堂に「みかえり阿弥陀像」というのがあるんですね。普通、正面を見ているじゃないですか。その阿弥陀像は後ろを振り返っているんですよ。それって深い意味があって、遅れている人の方に立ち止まるということなんですね。

それは格差是正といったことをよりも、たぶんもっと仏教的な愛の世界なんだろうと思うんだけど、そういう観点がすごく大切なんだなあと思うんですよい。やっぱり足取りの遅い人や行動できない人に対して、振り返るということがものすごく大事なんじゃないかって。

僕自身はすっごい行動できるんですよ。体力もあるし、環境にも恵まれているし。でも、わりと欠けがちなのは、努力できない人や行動できない人に対する理解。でも、その部分を随分考えるようになってから、自分の中で少し思考の幅ができたなあと思いますね。

無病息災では病気の人の気持ちが分からない

──何かきっかけがあったのでしょうか。

ぜんそくになったことです。今でも2、3カ月にいっぺんは調子悪くなって、点滴打ったりしています。仕事のしすぎだったんですよ。1週間のうち、2日は寝ないのが当たり前で、364日働くみたいな仕事の仕方を30代の前半までやっていたんですね。

だから、仕事ができない人ってすごく不思議だった。「仕事、できませんでした」って言われても、「おまえ、寝ないでやったのかよ?」みたいな。

──ハハハ。

「寝なかったらできるだろう」って。それが僕からすると普通のことだったから。そうすると、部下が「やっぱり寝ないとやっていけません!」って泣き言を言う。

──アハハ。

「別に、2、3日寝なくたって大丈夫だろう」ってね。何てやる気がないんだって当時は思っていたけど、やっぱりそんな仕事の仕方をしてたら、体が壊れるんだよね。

僕、ぜんそくになった大きな理由って、やっぱり過労だったんですよ。精神的には大丈夫だと思っていても、それだけ圧力を加えると、どこか体が悪くなる。

風船をふくらませて風船のキャパシティーを超えると、割れちゃうじゃないですか。それがたぶん病気だと思うんです。ある人はガンになるし、ある人は膠原病になるし、ある人は子宮筋腫になるし、ある人はウツになるんだと僕は考えているんです。

で、僕はぜんそくになった。ぜんそくになって、死にそうになって、息ができない体験をして、それからぜんそくの治療をして、ぜんそくの患者を見て、同時に自分の友人が結構、ガンになって、そして亡くなったというのがあって……。

そうすると、「病気って何だろう」とか、「健康って何だろう」っていろいろ考え始めますよね。

それで思ったのは、「健康であるということも、不健康だなあ」と。まん丸の満月みたいに健康だったら、不健康な人の気持ちが全然分からないんですよ。不健康な人は怠けているようにしか見えない。

でも、やっぱりそれぞれの器があってね。器には格差がないんですよ。大きい器だからいいわけでもないし、小さい器だからいいわけでもない。それぞれが持っている役割があって、それでたぶん自然なんだと思うんですよね。

それを認めつつ、キャパシティーをフルで使える人は使えばいいし、使えない人は使えない中で工夫してやっていくしかない。それを病気で学んだんです。

「無病息災」って言葉があるけど、無病で息災だと、病気の人のことが分からないんだよね。「一病息災」って言葉もあるけど、それが真実だなあと思います。

──ああ。

やっぱり、壊れる自分を知ると、壊れる人と、壊れている人の気持ちも分かるし、どういう感情がわくかともよく理解できる。だから、まん丸の状態がいいわけでもないんだなあって思いました。

病気はメッセージなんですよ。そのメッセージをちゃんととらえて、どう付き合うかがすごく大切ですね。病気を特別視しないというのかな。それも一つの自然現象だというふうに考えて、排除もしないし、でも甘やかしもしない。

ガンにかかった人を腫れ物に触るように扱ってもいけないし、一方で、ガンにかかった事実は重いから、そのことに関して、やっぱり直視せざるを得ないし。そのバランスがすごく難しいけど、でも、やっぱり仲間として、いかに共感しながら接するかがとても重要だと思います。

──「場の研究所」というNPO法人の所長で、東大の名誉教授の清水博さん(生命科学、場所論が専門)が言ってるんですけども。

はい。

──「生命活動というのは自己表現である。自己表現し合う生命が集まった時には即興劇の場になるんだ」と。なので、それこそガンにかかった時に、それに対してどう自分が表現するかということが生きてるということで、突発的に何かが起こった時に、そこで発する自己表現が生きてるってことなんだと。

ええ。

努力しないのも自己表現(笑)

──そうすると、そこにいる役者ってさきほど言った、器が大きいとか小さいとか関係なしに、みんなこの舞台の役者の一人だっていうところが実はすごく重要なんだと。それぞれにちゃんと表現をしていて、たぶん努力しないというのもある種の自己表現ですよね(笑)。

そう、自己表現。

──それを受け入れる、受け止めるという感性が重要だなあと感じました。

だから、いかに人に関心を持つか、好奇心を持つかが大事ですね。それからある種、許すというのかな。糾弾しない。むしろ、一つの個性ある存在として受け入れていく、ということを僕は大切だと考えています。

藤野 英人
1966年生まれ。
90年早稲田大学法学部卒業。
レオス・キャピタルワークス「ひふみ投信」ファンドマネジャー。東証アカデミーフェロー。明治大学非常勤講師。

野村アセットマネジメントを経て、96年ジャーデン・フレミング投信・投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。2000年にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント・ジャパン・リミテッドに入社。中小型・成長株ファンドの運用にあたる。2003年レオス・キャピタルワークスを設立、現在に至る。
著書に『スリッパの法則―プロの投資家が明かす「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方』 (PHP文庫)『もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら タケコプターで読み解く経済入門』(阪急コミュニケーションズ)『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』(PHPビジネス新書)『【図解】スリッパの法則 5000人の社長に会ったプロが教える!伸びる会社vs危ない会社の見わけ方』(PHP研究所)がある。

Ryusuke Koyama

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