【磯崎哲也さん第3回】起業する人のお手伝いをすることがサラリーマンの大きな糧になる

「あいつにできるならオレでもできる!」この連鎖反応が起きる

──僕は、周囲に誰か起業しようという人がいたら、ちょっとサポーター的にお手伝いをするといいんじゃないかなあと思っているんです。

なるほど。

──リーダーシップよりも、フォロワーシップの中で起業を学ぶというのがすごく重要かなと。

うん、うん。

──シリコンバレーもそうですけど、やっぱり起業家の周りにいた人がそれを見て次に起業するんですよね。

そうなんです。その連鎖反応です!

──「オレにもできる」っていう(笑)。

いわゆる「ナナロク世代」(1976年前後生まれの世代)の人たちは、その連鎖反応が起きたんでしょうね。ミクシィの笠原健治さん、グリーの田中良和さん、Fringe81の田中弦さん。

だって、松下幸之助がいくらすごいったって、そりゃあ「神様」なんだからすごいでしょうとしか思えない(笑)。本田宗一郎だ、井深大だといったおじいちゃんの話を聞いて、すごいのは頭で理解できても、今の人に「連鎖」を起こすのは難しいですよ。

──ええ(笑)。

しかし「あいつ、大学時代に彼女に振られて泣いてたじゃん」っていうヤツが起業して、それでうまくいってると、「あいつにできるんだったら、オレでもできるはずだ」って思うんです。

──アハハ。

それって非常に大事ですよ。インフォテリア社長の平野洋一郎さんも、アメリカで仕事をしていて、友達がみんな会社を辞めていくので、「次、どこに転職するの?」って聞くと、「いや、自分でビジネスを始めるんだよ」と。「ええっ!?あんたが?」っていう感じだとおっしゃるわけです。

で、結構うまくいって、どこかにバイアウトされて、かなりのお金がドーンと入ってきたりするのを見てると、「あいつであれか」って、みんな思うわけです。

──アハハハ。

「神様」が天から降りてくるんじゃなくて、「自分の隣にいたヤツ」がそうなることが大事なんですね。

──そうですね。

全員がベンチャーになる必要はないけれども、今よりあと10社、20社、超キラキラしてイケてる人たちが出てくるだけで、日本も相当変わると思うんです。

この10年間は、ベンチャーが悲惨な歴史だったと思っている方は非常に多いと思いますが。

──はい。

ライブドア事件もありましたしね。「あれで日本のベンチャー界は死んだ」なんてことを言う人もいる。でも、この10年間に、楽天もディー・エヌ・エーもミクシィもグリーも上場しているし、成功しているところはちゃんとあるんですよ。そういう刺激の輪が徐々に広がりつつある。

だから「日本全体を100パーセント総入れ替えしないとダメだ」なんてことは全然ない。あとちょっと、1.5倍ぐらい加速するだけで、良くも悪くも、みんな起業に目が向く可能性があると思います。

そのためには、やっぱり「ベンチャーの生態系」を作ることが重要になってくる。ベンチャーキャピタルやベンチャーをサポートする人や、そこで働く人など、いろんな機能が平行してグーッと育っていかないと。肉食獣だけでは生きて行けないんですよ。

──ああ。

今、あまりにもベンチャー界に流入してくるイケてる人材も少ないし、イケてるベンチャー企業も少ないので、成功例が急にポコポコッと出てきちゃうだけで、資金がドッと流れ込んで、またすごくバブッちゃうかも知れません。生態系全体が徐々にバランスよく成長してほしいなあと思うんです。

ま、世の中、なだらかに物事が進むのではなく、バブっちゃうときにはバブっちゃうのかもしれないし、人々の注目を集めるにはそれもいいかもしれませんが、人材が不足するがゆえに、あちこちで不祥事が起こって、「やっぱベンチャー、ダメじゃん」といった沈滞ムードが続くのは望むところではないので。

起業しようとする人のお手伝いをしてみよう

──今、サラリーマンをしている人に、僕がアドバイスをする立場だとしたら、「とにかく知人でベンチャーをやろうとしている人を手伝ってみたらいいよ」というのが一番適切かなあと最近強く感じています。

そうですね。

──無償で手伝うんだったら、相手も断ることもないし。

なるほど、なるほど。

──それをやっていくと、自分が次に何かをやるときの大きな糧になると思うんです。

絶対になりますね。

──仮に失敗しても、次に自分はこうしちゃいけないという勉強になるし。

ええ。

──成功したら成功したで、そこで活躍の場も見つけられるだろうし。そういう意味で、ベンチャーをやろうしている人のサポーターになることをサラリーマンの方におすすめしたい。

それ、いいですね! ベンチャーでちょこっと働いてみる。安く。

──安く。

そうすると、恩も売れるし(笑)。

──(笑)そうそう。

勉強になるし、会社も辞めなくていいし、体験もできる。めちゃくちゃいいですね。

──で、起業する側からすると、すごいうれしいわけですよ。お金がないときに無償でサポートしてもらえるのは。

しかも、ベンチャー経営者側から「今の会社を辞めて転職してくれ」って言うと、非常に責任を感じちゃう。「こいつ、この間、子供が生まれたばっかりだしなあ」とか心配しなきゃいけないけれども。

──そう(笑)。

気楽に「ちょっと手伝って」と言うのはいいですよね。

──ええ。

手伝っていると「ストックホルム症候群」に(笑)

実際、そうやって手伝ってるうちにハマってしまうんですよね。これ、ベンチャーでよく見かける光景なんですけど、ちょっと手伝ってると、そっちが面白くなっちゃう。まるで「ストックホルム症候群」みたいに、本来利害が相反するはずなのに「犯人」の方に肩入れしちゃうようになるんです(笑)。

──アハハハ!

ベンチャーキャピタルから、担当者が投資先に出向いたりするじゃないですか。そうすると、本当はベンチャーの社長を見張らなきゃいけないんだけど、逆に刺激的で楽しげなベンチャーの仕事に魅かれ始めて、そっちに転職しちゃったりするんですよね。

事業会社からの出向でも、本当は見張る役目なのに、そっちに転職しちゃうとかっていうのは、非常に多いですね。

なぜかというと、出向元が大企業だったりすると、仕事が面白くなかったりするわけですよ。ベンチャーは大企業の動きの10倍ぐらいスピード感が違うので、やっぱり面白さが勝っちゃうんです。だから、ベンチャーをちょこっと手伝ってもらっちゃうのはアリだと思います。

──僕も今、ある政治家の選挙プロモーションをやってくれ、という依頼が来たんですね。

ほう。

──「あんまりお金がないので、ボランティアベースでやってよ」ってことで、いろんな人を集めて。

ええ。

──そうすると、意外とみんな面白がって手伝ってくれるんですよ。こういうお金にならないところで、プロジェクトが進んでいくのは、ある種、オープンソース的な面白みがあるなあと思います。

うん、うん。

1回一緒に仕事をしてみなければ、相手のことは分からない

──人とのつながり、ソーシャルグラフにおける「信用」って、1回一緒に仕事をやってみる、というのが一番大きいんですよね。

そうなんです。一緒に働いたことないヤツっていうのは、わかんないんですよ。○○大学卒とか、○○商事勤務っていうスペックだけだと、わからないことが多い。

──それ、飲んでてもわからないですよね。仕事を一緒にやってみないと。

わからない。

──そういう意味で、ボランタリーベースの経済活動が今後、大きくなっていけば、起業の成功を支えていくベースになっていくという気がするんです。

なるほど。

──ソーシャルグラフのより太い線を作っていくためのものになっていく。

はい。

──勉強会だとか、飲み会だけで会っても、どうも「信用」まではいかないんですよね。

ただ名刺交換しただけでは全然ダメですね。

──一緒に働いた方がいい。お金が発生すると、またややこしくなりますが、お金が発生しない限りは、試しにやってみるというスタンスが増えていくと、面白いなあと思いますね。

事業計画を自分一人で全部ゴリゴリ作らなくても、優秀な知人に頼めば、情が移って来てくれたりするかも知れませんし。

──(傍らにいる『起業のファイナンス』の担当編集者の横田大樹氏に対して)編集者の人も自社の書籍の編集ばっかりやってたらダメなんですよ(笑)。無償で何か新しい事業をやってみる。電子書籍の依頼とかがあったら、名前出さずにやってみたりすると、すごい可能性が出てくるかも。

そうした方がいい(笑)。

──個人のリスクヘッジになると思うんですよね。自社がどうなるかわからないという時代に、じゃあ会社を辞めるというのもリスクが高いとしたら、試しにそういう布石を打ってみる。

ええ。

ベンチャーも手伝ってくれる人を求めている

──あと、ベンチャーも人を求めてますからね。

めっちゃくちゃ求めてるんですよ、はい。

──僕、全然手伝う気あるんですけど、やっぱり知り合いベースじゃないと、なかなか不安なんですよね。

そうですよね。

──そう考えると、両者をマッチングさせるような仕組みがあるといいですよね。サラリーマンにとっては、将来のリスックヘッジになってオプションが増える。ベンチャーにとっては、そういう人にサポートしてもらうとすごい助かる。

相思相愛ですね(笑)。

Ryusuke Koyama

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