【石井ゆかりさん第3回】「希望」を持つというのは、ある意味、絶望しているということ

小山龍介によるインタビューシリーズ。今回は大人気の星占いサイト「筋トレ」を主宰する石井ゆかりさん。その文学的で深い味わいのある文章が、多くの読者を惹きつけてやまない。ロジックや科学で割り切れる「既知の世界」だけではない、「不可知の世界」に触れてみよう。

(第一回「占いはもともと男性・為政者が使うものだった」第二回「星占いの世界観は人生を豊かにしてくれる」からの続きです)

星占いでは「時間」が「空間」に置き換わる

──世界観のところで、時間の話をしましたが、時間を空間的にとらえるのが、とても面白いなと思いました。時間を波のようにとらえる。時間が波という形になっていく。

ええ。

──星占いの世界では、「時間」が星座という「空間」に置き換わるわけですよね。

はい。

──ついつい時間って「どんどん流れていって、二度と来ない」と考えてしまうところを、空間的にとらえることで、何か時間感覚というものが変わり、それがプラスの変化をもたらしてくれるのではないか、という気がしました。

そうですね。「空間」というのは、次元が3つあって「空間」ですよね。星占いでは、星を10個使うのですが、その個々の星が一つの次元みたいなもので、ホロスコープ全体で時間がこう、立ち上がっているようなイメージなんです。長針と短針と秒針が、全部で1個の時間を作り出している、みたいな感覚があります。

──へえ。

時間がただの数量ではなくて、意味を持ち、仕組みを持つようになる。それが星占いをやっているときに一番面白い感覚です。「時間」と「空間」があまり区別されなくなってきて、「時間」も「空間」も同じようなものに思えてくる。

──ふんふん。

この「空間」が、一つの「時間」なんだと。実際、「時間」も「空間」もつかまえておけないわけで。私たちは、「空間にいる」と思っていますけど、実は「時間にいる」だけで、「空間」にとどまることができないんですよね。

──はい。

星占いは、10個の星の一つひとつに意味を与えるので、「時間という数量」という感じでもないし、「空間という場」という感じでもない。

──禅の世界は、結構、そういうところに踏み込んでいる気がします。「時間」と「空間」をどうとらえるか。

まったくその通りだと思います。禅の世界を私もそんなに詳しいわけではないですが、『禅語』(ピエ・ブックス)を書くときに、そうだなと思いました。

「たしかだ」と思っていることが、全然たしかじゃなくて、「どうでもいい」と思っていることの方が、ずっとたしかだったりする。禅は、そういう勘違いや誤解を正そうとしているんだろうなと感じました。

──ええ。

複数の「時間」の周期が流れているのが、本当の「時間」

この間、私、病院で身内の付き添いをしていたんですね。その病室はナースステーションの脇で、心電図の機械だと思うんですが、近くに置いてあってずっと音が鳴ってたんです。

二人の患者さんの心電図の音がずっと「ポン……ポン……」と鳴っていて、その2つのタイミングが違っている。「ポン……ポン……」の間隔がちょっとだけズレていて、2つの違う「ポン……ポン……」が続いているんです。

その2つの「ポン……ポン……」が一致するときがある。一致して、まただんだんズレていって、ズレが大きくなって、ズレが短くなって、また一致する。

──ああ。

それをずーっと聞いていて、「ああ、波ってこういうことなんだ」と思いました。違う速さのものが、かみ合ったり、ズレていったり。

で、星占いでは、星同士の公転の周期が違います。だから、星同士が近づいて、また遠ざかっていって、また近づいて、という動きを周期的に繰り返しているんです。

「星と星というのは、二人の心電図の周期のようなものなんだなあ」と。そして、私たちが気にする時間というのは、1つの「ポン……ポン……」なんですよね。ものすごく感覚的な言い方ですが。

──はい。

だけど、本当の時間というのは、たぶん、いくつもの周期の「ポン……ポン……」が離れていったり、また重なったりっていうふうにできているんだと感じたんです。

──複数の周期が、今この一つの時間の中で流れている。

それを我々は「縁」と呼んでいたり、「偶然」と呼んでいたりするんじゃないかと思うわけです。

──時間をそういうふうに表現するのは、すごいですね。

ふふふ。

──「シンクロニシティ」という概念があります。やっぱり周期が合う瞬間があって、偶然なんだけれども、どうも偶然に思えない、たまたま「ポン」と合う、そういう波があると言われています。

はい。

──その複数の波は、反対側からだと打ち消しあってしまうけれども、ほぼ一緒に流れると、すごく増幅される。「コヒーレント」という言い方をします。たとえば、光は拡散しているので、打ち消しあっていて大したことないですけど、「コヒーレント」な状態になると、レーザービームになって破壊力を持つ。

はい。

──その「コヒーレント」な状態をどう作り出すか、というのが物理学の世界にある。それを経営の世界でやってみようとか、個人としてやってみようという考え方があって、たとえば、「フロー」状態になろう、みたいな。

はい。

──そういう本をいろいろ読んでいると、あ、波っていうものを意識することが、経営にとっても個人にとっても重要なのではないかと。

わかります。たとえば、みなさん、波が下がっていくときってすごくイヤがりますよね。「悪い」ことと考える。で、波が上がっていくときは「いい」と考えるんです。でも、これは波じゃないんです。流れから離脱しようとするのは波じゃない。

ある意味、波を自分で打ち消しちゃうことによって、さまざまなことをおかしくしている部分があるのかもしれない。

──ああ。

たとえば、少し身体の調子が悪くなると、「運が悪い」と思い込む人がいるんですけど、私は「風邪を引くこと」が「運が悪い」とは思わないんですね。

もちろん、大病とかは別かも知れません。治らない病気もあるし、それはまた別のとらえ方があると思うんですが、ちょっと風邪を引くとか、ちょっとつまずくことは、それで一時的に作業が中断したり、人に世話を掛けたりしても、それ自体は、たとえば人の育成に意外な効果をもたらしたり、いつもと違うことを考える時間が持てたりするいい機会だったりもするわけです。

だけど、多くの人はちょっとでも調子が悪くなることをすごく忌避する。忌むんですよ。あの忌む感覚をどうにかして消せないだろうか、と思うんですけどね(笑)。

──はい。

波を作り出したいなら、下がるときもちゃんと生きなくてはいけない

波というのは、上がるときもあれば、下がるときもあるわけで、もし波を作り出したいのであれば、下がるときもちゃんと生きなきゃいけないんだろうと思います。嫌なことがあったときは、その嫌なことをやり尽くす、というか。

──コーチングのメソッドで、「下がっているところをとことん味わい尽くす」というやり方があります。それを思い出しました。

ああ。

──たとえば、過去にさかのぼって、大変な目に遭った体験などをわざわざ思い出して、今、どう思っているかを考えるんです。下がっている状態をしっかり体験することで、ある瞬間に「ポン」と転じて、スーッと上がっていく。

はい。

──1回下がらないと、上がらないんだということを教えるために、わざわざコーチがついて、その下がっているところを必死に味わう、というメソッドなんです。

それは面白いですね。以前、あるお母さんから「ウチの子が勉強しないんですけど」って相談を受けたことがあります。でも、「勉強しなさい」って叱っても、やる気なんか起きないです(笑)。

逆に、「勉強なんかイヤだよね、お母さんも家事なんかやりたくないや。もうやーめた」と、逆切れじゃなく本気で言ったら、子供は心配になって、「お母さん、オレも勉強がんばるから、お母さんもがんばろうよ」って言ったり(笑)。

──アハハ。

まあ、常にそんなにうまくいくことはないかもしれませんが、でも、やる気が出ない人に「やる気を出せ!」って強要するみたいなことは、「流れに逆らう」ってことなんだろうなと思います。

ただ、「流れに任せる」というのも、ちょっと違う気がするんですよ。そこをうまく説明するのがすごく難しい。私自身、そういう下がっているときを生きるのはつらいですから。

──はい。

星占いは、中立的にその流れや波を示しているだけで、下っていくところを「悪い」とも「いい」とも言っていないと思います。ところが、占いをする側に立つと、どうしても「悪い」とか「いい」とか言いたくなるんですね。

何しろ「当たっている」と言われたくなります。「あなたは星の動きからすると、こうね」って言うのは快感なんです。「当たっている」と言われると、ますます快感になる(笑)。

ああいう快感に耐えなきゃいけないんです。そういうところで調子に乗っちゃいけないのに、何か言いたくなっちゃう自分がいたりして(笑)。

「不運」「苦手」なはずの土星によって、強い力を持つ

──「下がっている」ところって結局、何なのでしょうね。どうとらえて生きればいいのか。

(紙を数枚取り出して)これ、実在する有名人のホロスコープのサンプルです。私がレクチャーで使ったものです。見方が分からないと、つまらないと思いますが。

──ほう。

土星の位置に注目してほしいんですが、土星って「サターン(悪魔、敵)」ですから、イヤがられる星で、「宿命」の星とか「制限」の星と言われています。でも、実は土星があるところで生きていると、強い力を持つんです。

たとえば、この人は牡羊座のところに土星がある。牡羊座は「戦い」を意味します。つまり、「戦い」のところに土星があるので、あるタイプの占い師の方は、「あなた、戦いが苦手ね」「戦わない方がいいわ」と言うかもしれません。実際、占いをお願いしたらそういう言い方をされた、という体験談を聞いたことが何度もあります。

でも、実はこれ、北斗晶さんのホロスコープなんです。まさに「戦う女」ですよ。この星は、戦うところで生きているんです。

──はい。

もう一つ、対照的で面白いのが、このマリリン・モンローのホロスコープ。マリリン・モンローは「セックス・シンボル」と呼ばれました。

「セクシー」と言えばすぐに持ち出されるのが、蠍座という星座ですが、彼女はこの星座に土星を持っています。彼女自身は「セクシー女優」と呼ばれることが非常にイヤだったそうですけれども、結局、セクシーさで力を持っちゃったわけですね。

──ふんふん。

土星というのは、占星術の教科書を見れば、「不運」「制限」「我慢」「苦手」と書かれています。でも、多くの人は意外と土星のテーマを生きていて、それによって、社会的な力を持っているように思えます。

土星というのは、「権威」なんです。「権威」であり、「時間」であり、「社会的なパワー」。外の世界と接するときの力なんです。だから、守る力でもあるんですが、ある意味、攻撃する力でもあり、つまり、国境線の力なんですね。外に拡げていくことも、内側を固めることもできるラインです。

たぶん、本人の中では苦手意識もあって、難しい分野でもあるんでしょうけど、そっちに向かっていくと、何か社会的な力を持っちゃうっていうのが、この土星なんです。

──一概に「いい」とか「悪い」とか言えないわけですね。

そうなんです。それなのに世の占い師の中には、「あなた、そういう分野に向いていないわ」とアドバイスしてしまう人がいる。北斗晶に、「あなた、戦いなんて向いてないわ」って言っちゃう(笑)。

でも、土星がある分野に向かって歩いていくと、たぶんそこに、なすべきことがちゃんとあるのかもしれない。

──なすべきこと。なるほど。さっきの波で言うと、下っているところを「悪い」と思うのか、なすべき「宿命」と思うのか、本人の受け止め方によって、全然違ってきますね。

とりあえず「いい」か「悪い」かを決めないでおく

「悪い」と定義しちゃった瞬間に、思考停止になってしまいます。「いい」か「悪い」かではなく、常に「この出来事はなんだろう」と思った方がいいと思います。そうすると、何が起きてもたいがいのことは面白くなってきます。

たとえば、お金を落としたときでも、「この出来事はなんだろう」と思う。とりあえず、「いい」とか「悪い」とか決めないでおく。何かを失うことは、何かが入ってくることかもしれない。実はラッキーな出来事かもしれないんです。

財布を落として警察に行って、「財布落としたんです。どうしよう」と警察官に話してたら、その警察官と恋に落ちるかもしれないですし(笑)。何が起こるかわからないんだから、その出来事が「いい」か「悪い」かを、今すぐジャッジしようとするのはつまらないと思います。

──そうですね。

もちろん、「面白い」なんて言っていられないような深刻なことも、ときには起こります。でも、そういうときでさえ、「これは災難で害悪だ。私は不運だ。他の人がうらやましい」と頭ごなしに考えてしまうと、やっぱり見えなくなるものはあるんじゃないかと思います。

多くの文学が、そのことを言っている気がします。主人公たちが、何か災難が起こったとき、それをどうとらえるかが描かれています。作家によっては、主人公を信じられないくらい、ひどい目に遭わせたりします。でもそこで、単に「運が悪い。もうダメだ……」とつぶれてしまうんじゃなくて、でも単に「負けない!前向き!」みたいなことでもなくて、それ以外の、「受け止めて、船を出す」ことを幾多のやり方で描いている気がします。

それはフィクションなんだけど、でもやっぱり、現実なんだと思うんです。

──なるほど~。

星占いで先を示されると、今を生きられない?

──僕の牡牛座についてちょっと聞かせてください。「2020年ぐらいに大きな広がりがある」と書いてあって、うれしくなりました。

はい。

──じゃあ、10年後に向けてしっかり計画を立てようと。「先に何かがある」と言われると、がんばれる気がしたんですね。

ええ。

──一方で、禅の世界では、「未来にとらわれると今に集中できない。今を生きられないからダメだ」と言われていて、それが難しいなと思ったんです。

たぶん、「期待」と「希望」の違いだと思います。何かを「期待」すると、それが来るまで時間がストップして、待っちゃうんですよ。

──あー!

だけど、「希望」を持つというのは、ある意味、絶望しているんですね。待ってはいないんです。希望の「希」という字は、「まれ」です。あるかないかわからない、むしろなさげなものに対して、「望」という字は、背伸びして触ろうとすること、うーんと背伸びして触ろうとすることなんだそうです。だから、「希望」の方は動きがあるんです。でも、「期待」の方は止まっている。そこがすごく違うんだと思います。

私は、「『期待』は捨てて、『希望』を持とう」みたいなことをわりと言ったりしてます。

──ハ~。

なんか、カッコよすぎて恥ずかしい(笑)。

──ハハハ。

「期待」は捨てて、「希望」を持とう

だから、「10年後に○○がある」というのは、「希望」を持つことで、待つ姿勢にはならないですよ。今を生きるということに、すごく役立つと思います。

──たしかに。

でも、「あさって、いいことがある」とか言われると、人は待っちゃうんですよね。「じゃあ、今日と明日はいいや」って。それは「期待」であり、よろしくない。

──ええ。

失恋した人から占いを頼まれたら、私は必ず「あなたの婚期は3年後ぐらいです」というようなことを言うようにしています。もちろん、ウソじゃないですよ。ホロスコープで、そう言えるタイミングを探すわけです。

そうすると、その人は、「今、振られたら私はどうなるの?」「彼を何としても引き止めなきゃ!」という思いからふわっと開放されて、「どうせ3年後に結婚できるんだ、誰かとは。じゃあ、今どうしよう」って、視野がちょっと切り替わるんです。“待ち”が外れるんです。

──ああ(笑)。

「何かじゃなきゃいけない」という切迫した緊縛が外れる。「この人さえ、私のものになればいいのに」とか、「これさえ起こればいいのに」という縛りがフッと抜けて、もっと遠くを見られるようになる。そのときに、今の自由度が増して、今やりたいことなどが増えたりするんですよ、不思議と。

そこで振り抜けたおかげで、しばらく沈黙してたら、彼が向こうから帰ってきた、とか(笑)。

だから、「10年後」を見ることは、未来に縛られるということではないと思います。

──なるほど。

石井ゆかり

独学で星占いを習得し、2000年にウェブサイト「筋トレ」(http://st.sakura.ne.jp/~iyukari/)を立ち上げる。年間・週間の12星座占いを情緒あふれる文体で語り、延べ約2500万アクセスを記録。雑誌や携帯コンテンツなどで占いを執筆するほか、星占い以外の分野でも著作を発表している。第7回Webクリエーション・アウォードにて「Web人賞」受賞。『牡羊座』~『魚座』までの12星座シリーズ(WAVE出版)、『12星座』(WAVE出版)、『星読み ホロスコープなしでわかるあなたの運勢』『愛する人に。』(幻冬舎コミックス)、『星占いのしくみ』(共著・平凡社新書)、『禅語』『いつか、晴れる日』(共著・ピエブックス)など著書多数。

Ryusuke Koyama

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