【奥野宣之さん第4回】ミクロとマクロは通じている

仕事力を高めるためのさまざまな方法を提案し、多くのビジネスパーソンに支持されている奥野宣之さん。最新刊『仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト―あなたが逆転するための73のメニュー』も実践的なノウハウが満載だ。最終回は、アイデアを生み出す視点の面白さについて伺いました。(インタビュアー・小山龍介)

インタビュー第一回 「知的生産ワークアウト」の根底に面白さへの切迫感がある
インタビュー第二回 後世に残るコンセプトを作りたい
インタビュー第三回 集中力が驚異的なアウトプットを生み出す

 

柔軟性があれば面白いものはいくらでも作れる

小山さん、横井軍平さんってご存じですか。

──ええ、任天堂のゲームクリエイターの。

僕はあの人が昔から好きなんです。『横井軍平ゲーム館』っていう本が最近、2100円で復刊されたんですよ。それを昨日、読んでたんですけど、めちゃくちゃいいこと書いています。

──へえ。

まさにアイデアの本質みたいなことを書いてる。彼はすごい使い古された技術で新しいものを作っちゃうんですよ。昔、おもちゃの鉄砲を撃つと判定が出るゲーム機がありましたよね。

──はい。

引き金を引いたら何かの信号が飛んでいって、それを判定するセンサーを作らなきゃいけないと、みんな思っていて実現できなかった。横井軍平さんはセンサーじゃなくて、的として太陽電池をつけたんです。太陽電池は光が当たると通電するから、それで当たった判定ができるんです。

──あー。

みんなは太陽電池を「電池だ」「電池だ」と思ってるからセンサーだとは思えないんですね。技術屋っていうのは、そういうふうに凝りかたまってしまう傾向がある。横井軍平さんは、自分は別にすごいことを知ってるわけではないし、専門知識もないけど、柔軟性があったから、面白いものはいくらでも作れるって書いてるんです。

──なるほど。

有名な話ですけど、ゲームボーイをなぜ白黒にしたかとか、コントローラをなぜ十字キーにしたかとか、あれは柔軟性がないと思いつかない。全部、横井さんのアイデアですから。

──そういう創造性や発想力って、さきほどから奥野さんがおっしゃるように、別に知識が多いから生まれるわけじゃないんですよね。

そうなんです。知識の量を求めていくと、新しいもの、新しいものって、もう宇宙に行ったり、最先端の研究をしたりしなきゃいけなくなる。でも、別に極地に行かなくても、ほふく前進すればいいんです、街の中を。角度を変えて見ればいい。

──そうですね。

そうしたら、絶対に面白くなると思うんですよ。だから、僕が本を書くときに心がけているのは、ありふれた材料で、誰でもできて、新しいものにしないといけない、ということ。僕はものすごい対象を取材することはできないですし、最先端の現場を見たり聞いたりしてもわからないですから。もっと身近なことの発見をしたいんです。

──はい。

マクロに考えるのとミクロに考えるのは通じている

「パワーズ・オブ・テン(POWERS OF TEN)」という動画があるんです。イームズのイス職人が撮った映画で、ユーチューブで見られるんですよ。8分ぐらいの作品。

──(検索して見る)ああ!

これを見ると、いつも思うんです。マクロに考えるのとミクロに考えるのは、どこかで通じ合っているんだなあって。どんどん世界を広げていくのは一つの手法だけど、逆にミクロにミクロにミクロにミクロに……って世界を狭めていくのも、ある種、本質に迫るものの考え方の一つだなあと。

世界紛争の取材をするのもいいけど、隣の家の夫婦ゲンカを取材するのもまた人間っていうものが理解できるんじゃないか、と。仮説ですけどね。

──この映像、美術館で見たことがあります。

最初は宇宙に宇宙に宇宙に宇宙に……ってどんどんスケールが広がっていく。そして折り返し地点から地球に戻ってきて、人間の皮膚の細胞のアップになって、どんどんミクロの世界に入っていって、最後は原子の雲になる。

──手塚治虫も『火の鳥』で描いてますよね。大きなスケールの世界と、小さなスケールの世界が相似である。銀河と分子は似たような形をしているんですよね。

マクロとミクロは通じてる。というか、マクロとミクロは同じものなんだっていう。だからどうだってわけじゃないですが、すごく創造力がかきたてられる。

──こういうことって、視点を変えてみないと分からないですよね。ミクロの世界にいると、マクロで相似の構造があることも分からないし、そこで何が起こっているのか認識すらできない。

その逆もありますよね。

生物学者の福岡伸一さんが書いた本にあったんですけど、たとえば、食べ物分子にマーキングをして、それを食べたら、1時間後に体のあらゆる部分からその分子が発見されるんですって。変わっていないように見えても、人間を構成する分子は想像できないほどの速さで、絶えず入れ替わっているんですよね。それ、すごいなあと思うんです。

──『動的平衡』ですね。ミクロで起こっていることが、マクロの視点からは認識できない。

そんなことがあり得るのかって感じ。

──ええ。

そういうものを見たり読んだりすんだりするのも、物事を柔軟に考える手ですよね。

高速思考のためにロジックを外す

──アウトプットがすごい勢いで出るっていう状態になるためには、こうした視点のレイヤーを高速に変えていかないといけないんですよね。

そうそう。硬直しちゃあダメですよね。

──禅の世界もそうだと思うんです。禅の瞑想って頭の回転を極限まで高めて、こんなに速いんだっていうのを実感するトレーニングなんです。そのためには、一つのレイヤーにこだわっていたらダメなんですよね。僕らはロジックで考えちゃって、極端に遅くなる。それは、思考のレイヤーが固定されてしまうから。

そうですね。前にロジカルシンキングの本を5冊ぐらい読んだことがあるんですけど、もういらないですね。まあ、知っといて損はないけど、無理に使う必要はないなって思いました。普通の人間の思考はロジカルに動いてないから、ロジックで「こうだろう」って説明しても、その人はそのとおりに動いてくれない。人間はロジックでは説得できないですよねえ。

──そう。で、ロジックだと本当に考えるのが遅くなるので、何か言われても、それに返答するのに「1日待ってください」ってなっちゃうんですよね。瞬時に返答できない。

やっぱり、ロジック的にはおかしいけれども感動がある、という方がいいと思うんです。

──そうそう。しかも、ロジックが複雑すぎて一見、間違ってそうで合ってることがよくある。

そうそう。

──で、ロジックは合ってるけど、実際は間違ってるというのもよくあるんですよね。

ゲーム理論とか、まさにそうですよね。ロジカルにみんなが動いたら、一番強い戦法というのがあるんだけど、みんなロジカルに動かない。

──はい。

だいたい、みんなロジカルになったら、犯罪なんかゼロになるはずじゃないですか。何も得しないからって。でもゼロにはならない。

──この10年ぐらい、ロジカルシンキングブームで、多くの人がロジックにとらわれちゃってますよね。だから、僕はロジックの外し方を知りたいなあって思ってるんです。

推理小説とかでも、面白いものって結構ロジックが破綻してるの、いっぱいあるじゃないですか。

──ええ。

でも、そんなの別に気にならない。『キン肉マン』とか、相当おかしいですよ。

──アハハハハ。

ロジックなんかムチャクチャですけど面白い。

──そうですね。

ああいうものの方がいいですよね。

仕事とプライベートを分けない。生き方をフロー状態に

──ええ。そして、生産性を1日3000字というレベルから、1日1万字というレベルまで上げるときには、絶対ロジックを外さないといけない。

はい。

──内田樹さんがよく言ってるのは、講演直前まで何も考えてないけど、立った瞬間にバーッと話が出てくる状態に持ってかないといけない、と。それは別の言い方をすると、「フロー状態」ですよね。

物事のとらえ方のセンスというか。態度自体が日頃からアウトプットを見こしてないと、そんなふうになれないですよね。いきなりしゃべって面白くなるわけがない。

──ええ。

ほとんど「生き方」みたいなもの。

──生き方、ええ。

僕は仕事とプライベートを分けても意味ないと思ってるんです。それは今の話と同じことだと思う。だって、プライベートだからって別の人間になるわけではないから。起きてるときは常に仕事のことを考えているし、常に遊びのことを考えてるし。両方ですよね。

──そうですね。

何を見ても違うとらえ方をする人っているじゃないですか。目がいいというか、ある意味、目がゆがんでる。そういう人が僕はいいと思うんですよね。

──はい。

石原慎太郎がたぶん、そうだと思うんですけど。

──ハハハハ。

おかしいでしょ、あの人。何か見ても言うことが。普通の人だったら感動することが、あの人からすると、何かこう別のものになって見えるんですよね。

──ハハハ。

目がゆがんでる。だから面白いんですよ。作家だなあと思いますね。僕の好きなエッセイスト、伊丹十三とかも好きなんですけど、やっぱり目が抜群にいいですよね。

──ああ。

たとえば、カレーを食べるときにコップにスプーンを入れるのはなんとなくイヤだ、みたいな文章を書いていて、なぜイヤなのかを何ページにもわたって説明しているんです。そういうのって、目がいいなあって思いますね。

些細なことにこだわると目が良くなる

──目が良くなる方法ってあるんでしょうか。

些細なことにこだわることでしょうね。たとえば、目の前の人がちょっと変わったネクタイをしていたら、「なんでそのネクタイしてるの?」とかね。「なんで?」「なんで?」って聞いていくこと。他人に対しても自分に対しても。

だから、奥さんに服を選んでもらうのは論外ですよ。やっぱり自分で考えなきゃいけない。パソコンやケータイ、マウスに一つにしても、こだわらないと。(マウスを見て)「このトラックボールのやつがいいんだ」って。

──ええ。

「これは何か違う」って思わないといけない。マウスを使っていて、「これでいいのか。この動きはムダじゃないのか」って思ったら、「それを改善したものが絶対あるはずだ!」って電気屋に行くわけです。で、あったと。で、買うわけです。そういう感じですよ。

僕も本を探すときとか、「絶対にこういうことを解説してる本があるはずだ!」って思って探します。で、なかったら、「これは隠れたニーズだ!」って思う。

──こだわりというのは、たぶんその人の根本にあって、何に好奇心を感じるかというところにつながっている。

そう。別に全部に感じなくてもいいと思うんですよ。僕もサッカーとか見ないし。でも、文具とかはめちゃくちゃこだわります。ボールペン一つでも、自分の選んだものじゃないとイヤですしね。

──エッセイストとかで目のいい人というのは、「あれ、自分はなんでこれにすごくこだわってるんだろう」っていう、もう一つの視点を持ってるんでしょうね。

ああ、そうでしょうね。

──それがあると、こだわりも、単に執着してるんじゃなくて理由が言える。

だから、自分が何かを面白い!って思ったら、それがなんで面白いと思うのかを説明しなきゃいけないっていう義務感。それは常に持っておいた方がいいでしょうね。

──そうすると、またそのこだわりもより深くなっていく。相乗効果というか。

谷垣さんを見て不安になるのはなぜなのか、言語化したい

第三者的な視点が必要ですよね。主観と客観がバランスよくないといけない。自分が面白いっていうことを人に伝えないと意味ないと思うんです。そのためには、その面白さの理由を考えなきゃいけない。たとえば、自民党総裁の谷垣禎一さんを見て、なんでダメだと思うのかとか、説明しなきゃいけないなと思うんですよね。

──ハハハ。自民党のCMはなぜ悪いのかを(笑)。

そう(笑)。不安になるのはなんで?とか。

──アハハハ。

同じように思ってる人って、いっぱいいると思うんですよ。でも、まだ言語化されてないでしょう?

──たしかに。

谷垣さんのダメなところを一言で言えないかなあ、とかね。そういうことを考えますね。こう、みんなが思わず膝を打つような。

──うーん。

人間の感性が言語化されてないところをうまいこと言語化することって大事ですよ。

──奥野さんがおっしゃることをまとめると、こだわったり、好奇心を持ったりすることが重要で、それをどう言語化するかがさらに重要だと。

そう。伝えられないといけない。僕に「ワールドカップ、面白いでしょ」って10回言われても、僕には何が面白いのかわからないから。伝わるようにバシッと説明してもらいたい。

非の打ちどころのない本は退屈、読者に突っ込まれたい

──その伝える内容や伝え方についても、面白さや実利がほしい。

そう。みんな面白がりたいんですよ。たとえ、学術論文でもサービス精神は必要だし、エンターテインメントにする必要はあるでしょうし。人の時間を頂戴するものだから、楽しませないとみんなイヤになりますよね。会社の研修なんかでも、まったく面白くない研修よりは、面白い研修だったら行ってもいいかな、みたいな気がしてくるじゃないですか。

──はい。

え、そういうところにこだわってるの? そこまでやる? やりすぎだろう?みたいな面白さでもいいんですよ。僕の1冊目の本というのは、実はそういう「人に突っ込まれたい」本になってるんです。

──へえ。

そういう狙いで書いてる。今でもそうですよ。

──たしかに、エエーッ?みたいなネタが結構、ありますよね。

ええ。

──バランスがいいんでしょうね。突っ込まれるネタばっかりだと、トンデモ本になっちゃうから。

非の打ちどころがない本というのは退屈ですよ。突っ込むということは、みんな自分の意見があるということだから。「オレはこう思うよ」っていう本はいい本なんです。だから、僕は読んでくれた人が突っ込んでくれる本を書いていきますよ。面白くて実利があってね。

──はい、これからも楽しみにしています。ありがとうございました。

ありがとうございました。

インタビュー第一回 「知的生産ワークアウト」の根底に面白さへの切迫感がある
インタビュー第二回 後世に残るコンセプトを作りたい
インタビュー第三回 集中力が驚異的なアウトプットを生み出す

奥野宣之(おくの・のぶゆき)

1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社、業界紙を経て、『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)で著作デビュー。メモやノートの活用法から発想術、読書術、情報収集と活用まで、わかりやすく書き下ろした著書は若手ビジネスパーソンを中心に支持を集め、累計部数は50万部を超える。記事や著作の執筆、書評、講演活動のかたわら、独自に編み出した文章や企画を作る方法論、日常的なトレーニング法などを、仕事力アップのための「知的生産ワークアウト」として広く発信している。作家のエージェント、アップルシード・エージェンシー所属。

Ryusuke Koyama

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