【奥野宣之さん第3回】集中力が驚異的なアウトプットを生み出す

仕事力を高めるためのさまざまな方法を提案し、多くのビジネスパーソンに支持されている奥野宣之さん。最新刊『仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト―あなたが逆転するための73のメニュー』も実践的なノウハウが満載だ。第三回となる今回は、超人的な高速アウトプットに関する仮説を伺いました。(インタビュアー・小山龍介)

インタビュー第一回 「知的生産ワークアウト」の根底に面白さへの切迫感がある
インタビュー第二回 後世に残るコンセプトを作りたい

「立ち机」に「白衣」……。信じるものは救われる

──仕事術的なことをお聞きします。集中したくても、どうしても仕事が手につかず、集中力が途切れてしまう瞬間があります。それをワークアウト状態に持っていくためのコツはありますか。

それはいまだに研究中ではあるんですけど、うーん。たとえば、僕は電気を消す。小山さんの本にも書かれてませんでした?

──ええ。あれ、受験勉強の時に効果があったんですよね。家で勉強できなくて、ベッドがあるとベッドに煌々と電気が照らされて、ついつい寝ちゃうんです。それで電気を消して、机の上だけを照らすと集中できた。

僕もいろいろ研究しました。「立ち机」もそうです。

──あ、あれ、すごいと思いました。たしかに立ってたら寝られないですからね。

そう。僕、新書の本(『だから、新書を読みなさい』)を書いたときに、新書を80冊読んだんですけど、1時間に3冊も4冊も読もうとすると、立ってないとダラッとするんですよ。立ってるとバーッと読める。この効用はすごいもんだなと思いました。

あと、バロック音楽を聞いたりもします。バッハのゴールドベルク変奏曲とか。そういう複合的な方法ですよね。イチローみたいに、流儀みたいなものを持っておくといいと思います。

だから、僕がやっているバッハのゴールドベルク変奏曲を聴くという方法が、本当に誰でも集中できるかどうかというのは大した問題ではなくて、それを集中できる音楽だと信じてるか信じてないか、というところですよね。「信じるものは救われる」じゃないですけど。

──ええ。

仕事がはかどったとき、ご飯をどれぐらい食べたか

「自分はこの喫茶店の、このカウンターの端っこに座って、あのアイデアを思いついた」ってことがあったら、アイデアにつまったら、「あそこに行けば、なんとかなるんじゃないかな」って思うわけですよ。

──はい。

そういう法則というか、自分なりの仮説みたいなものを重ねていく。この間、えらい仕事がはかどったとき、何の音楽をかけてたっけ? あ、あの音楽だったなあ、とかね。ご飯はどれぐらい食べたっけ? 卵は何個食べたっけ?とか。

自分なりの法則を作っていくんです。「自分は食後30分は絶対に仕事ができない」とかね。夜の何時ぐらいがはかどって、服はこういうのを着て、というふうに。僕、最近、化学実験用の白衣を着て仕事したんですけど。

──エッ(笑)。効果はあったんですか。

最初のうちは緊張感があったんですけど、だんだん慣れてきて効果が薄れてきました。でも、「ここぞ」というときは、また着ようかなあって思ってます。

論理的に考えるとスピードが遅くなる

──僕、奥野さんに、どれぐらいのスピードで文章を書くのかというのを伺いたくて。それで、すごく面白いブログがあるんです。登大遊さんという、プログラマーの世界では有名な人がいるんですが、その方のブログのエントリーを2007年に読んで、衝撃を受けたんですよ。

ほう。

──この人、1日に1万行、プログラムを書くんです。それが当たり前だと思ってたけど、いろんな人に聞いたら、「それはとんでもない量だ。普通は1カ月3000行ぐらいだよ」ってビックリされる、と。1日1万行と1カ月3000行って、すごい差ですよね。

ええ。

──で、それがなぜできるかって自分に問いかけたんです。そしたら、ロジカルに考えてないってことに気づいた、と。

へえ。

──まず、こういうソフトウェアがあればいいなっていうのをぼんやりイメージする。そして、そのイメージを保ったまま、「心の中に、ソフトウェアの設計図やデータ構造といったものを思い起こす」。「心の中に」ってすごいでしょ(笑)。

「心の中」ってどこなんだ(笑)。

──論理的にやったらスピードがまったく出ないというのは、ホントにそのとおりで、僕たちは書くときは論理的に書いてるんですよ。

たしかに、編集しながら書いてますねえ。読みながら書いちゃうから、そこに論理的思考が入ってきてしまう。

──この人の言ってることは、かなり瞑想や坐禅に近い状態の頭の使い方ですよ。論理的に考えちゃいけない。とにかく、感覚的にやった方がいい、その方が高速でアウトプットできるんだ、と。

最終形をイメージしてとりかかる

──で、もう一つ重要な点が、最終形をぼんやりとイメージすること。

たしかに、そういうのってありますよね。僕も本を書くときには、紙を出して、本の装丁を描いてみたりするんですよ。帯がこうあって、こういうコピーがついて、こういう感じだと読者に受け入れられるだろうか、とか。そういう最終形のイメージをするんです。

──その最終形を目指してアウトプットする。

それは自分なりの最終形だから、誰に見せるものでもないんですけど、そういう最終到達地点を作っておくと安心するんです。どんな仕事でも不安ですからね。うまくできるかどうか。

不安が生産性を妨げる

──全体像が見えていれば不安もないし、細かなところを気にしなくても、つじつまはちゃんと合ってくるんでしょうね。

不安だと、執筆は進まないですから。

──不安が仕事の生産性を妨げるという要素も大きいですよね。

大きいです。だから子供のように、うまく作らなきゃいけないって考えずに無心にやったら、いくらでも面白いものができるんじゃないかなあと思います。

認められたいとか、うまくいきたいとか、いろいろ考えるから、できなかったらどうしようって不安になって、余計苦しむわけで。単純に「Do it!」みたいな感じでやるのが一番いいんだろうなあ。

──ええ。

はてなダイアリーとか見てても、とんでもない量の文章を書いてる人っていますよね。1回のエントリーで8000字とか。

──そうですね。

こんなん、オレ5時間ぐらいかかるよっていう量の文が書いてある。

──内田樹さんのブログもそうなんですよね。めちゃくちゃ忙しいにもかかわらず、普通に2000字、3000字書いてて、それをおそらく、信じられないくらいの短時間で書いてしまっている。

うまく書こうとか、認められようと思ってないんでしょうね。無心になってやるからできる。

コンスタントに「1日1万字」を維持する

──そうですね。つくづく思うのは、1日に1万字書くというのは、結構大変なことですよね。書けたら、10日で1冊本ができますから。でも、それをやらなきゃいけないなと思ってるんですよ。

たしかに。

──それは、アスリートでいうと一つの到達地点なんです。で、内田樹さんは間違いなく1万字を軽くいっちゃうんです。1日で、サクッと。茂木健一郎さんもそうですよね。Twitterなんかを見てると。

速いですよね。

──速い。しかも、クオリティーが高いんです。あれだけのレベルまでいくと、スピードが速ければ速いほど、クオリティーが上がるという矛盾した状態になるんですよね。

なんかウワサ話で聞いたんですけど、リリー・フランキーさんは、手書きだけど下書きをまったくせずに、いきなり完成原稿を原稿用紙にガーッと書くと。

──同じことですよね、たぶんロジカルに考えない。

そう。あとで段落を入れ替えようとか、そういうことを考えたらダメなんですよ。

──そうそうそう(笑)。

その場で決着させないと。

──そうなるにはどうしたらいいんだろうっていうのが僕の疑問なんです。

僕は本を項目を立ててから書くんですが、どうしてかといったら、入れ替えるからなんですよ。段落はこっちのほうがいいかなあとか、タイトルを変えようかなあとか。「です」が2回続いたから、「ます」にしようかなあとか。

そんなんばっかりやってるから時間がかかるわけで、一発で書けたら、それに越したことはないですよね。それはもう職人というか、達人的な地点ですよねえ。

──それで僕、奥野さんがどれぐらいのスピードで書くのかなあと思って。

速いときは1万字書きますよ、1日で。鬼のような形相でエージェントの宮原さんが原稿を待ってるときは。

──ははは。

そういうときって、最後ヘロヘロになるんですけど、充実感がありますよね。

頭の中をとにかく吐き出す

『書きながら考えるとうまくいく!』という本があるんです。アメリカ人のライティングの指導をしている人が書いていて、速く書くトレーニングの方法を教えています。

ストップウォッチを持って、「今、考えてることを全部書いてください」って10分間書かせる。僕も自分でやったことあるんですけど、800字書けるんです、10分で。15分だと1500字ぐらい。

たとえば、「あれも心配だ、これも心配だ。でもオレはなになにで、友達がああ言ったから腹が立って……」って、ずーっと書いていって、だんだんつまって、「でも、でも」になるんですけど、「それは、それは、それは、結局、結局、結局……」って書いていくんですよ。手だけは絶対に休めない。

──はい。

そうやって書いたものを、書き終わったあとに項目を立てて整理していくと、なんかそれなりに決着するんです。

──ああ。

まあ、マインドマップに似てるのかもしれないですね。そういうカウンセリング手法とか、プライマル・スクリーム(原初療法)ってありますよね。なんでもいいからとりあえず叫べ、みたいな。頭の中をとにかく吐き出す。ああいう感じだと思います。

そうすると、雑念がなくなって集中しやすくなるんだと思います。

──論理的思考を外していくんですね。

将棋の棋士の思考も似ていますよね。瞬時に何手先までも読む。

──それであとあと調べると、結局、最初にこれがいいんじゃないかと思ったのが正解だという。

そうそう。直感がかなり正確だったりするんですよね。

だから、別に無理してロジカルに考えるよりも、それは人に任せて、とりあえず直感を大事にした方がいいんでしょうね。

瞑想すると文章を書くスピードが速くなる

──そう考えると、たとえば瞑想するようになると、絶対文章を書くのが速くなると思うんです。それはヨガをやると運動がうまくなるのと一緒で、ある種、自分の状態をコントロールするということだから。

それはありますね。自分の脳みその調子がよかったり悪かったりするわけですけど、それを常に「ここぞ」というとき、自分で調子よくできたら最強ですよね。

──それでいえば、運動の場合は好不調の差は、そんなに激しくないですよね。たとえばマラソンをしたら2時間が2時間10分になったとか、それぐらい。けれども脳のパフォーマンスの誤差って、あまりに変動が激しい。

僕も躁鬱みたいなとき、ありますからね。たまにガーッてすごい書きなぐって、オレは天才じゃないかって思うんですけど、それは半年に1回ぐらいしかこない。

──あははは。

あれはなんなんでしょうね。

──そこに知的生産の秘密も隠されているんでしょうね。ぜひ解明したいですね。

インタビュー第一回 「知的生産ワークアウト」の根底に面白さへの切迫感がある
インタビュー第二回 後世に残るコンセプトを作りたい

奥野宣之(おくの・のぶゆき)

1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社、業界紙を経て、『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)で著作デビュー。メモやノートの活用法から発想術、読書術、情報収集と活用まで、わかりやすく書き下ろした著書は若手ビジネスパーソンを中心に支持を集め、累計部数は50万部を超える。記事や著作の執筆、書評、講演活動のかたわら、独自に編み出した文章や企画を作る方法論、日常的なトレーニング法などを、仕事力アップのための「知的生産ワークアウト」として広く発信している。作家のエージェント、アップルシード・エージェンシー所属。

Ryusuke Koyama

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