【奥野宣之さん第2回】後世に残るコンセプトを作りたい

仕事力を高めるためのさまざまな方法を提案し、多くのビジネスパーソンに支持されている奥野宣之さん。最新刊『仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト―あなたが逆転するための73のメニュー』も実践的なノウハウが満載だ。インタビュー2回目となる今回は、前回からさらに深く、奥野さんの創造の秘密に迫っていきます。(インタビュアー・小山龍介)

インタビュー第一回 「知的生産ワークアウト」の根底に面白さへの切迫感がある
インタビュー第三回 集中力が驚異的なアウトプットを生み出す

「面白い」と「実用性」を備えた本が好き

──本の読み方なども、面白いか面白くないかという基準なのですか。

そんな感じです。面白くて、知的好奇心が満たせて、なおかつ実用性がある本、というのが一番好きですね。

昔の評論って、そんな感じだと思うんですよ。たとえば、山本七平さん。あの人の評論は面白くて、嫌味で、頭が良くて、文体も工夫がある。あとは椎名誠さんとか。小学生ぐらいから読んでました。ああいう雑文が好きだったんです。

──当時、そうした本を読みながら、「将来、自分が作家になりたい」と意識していましたか。

いや、意識は……。あ、でもどうだろう。なりたいと思ってました。作家というか、書き手というか、ライターになりたいと思っていた。週刊誌なんかの雑文を書きたいって、中学生ぐらいから思ってましたね。

──結構、早い時期からなんですね。

マンガだと技術が相当いるから大変だろうというのが分かっていたし、ストーリーをつづりたいという欲もなかったので。まあ、ノンフィクションの方が好きだし。

──中学生の自分が、今の奥野さんが書いた本をノンフィクションとして見たときに、どんなふうに読むでしょうね?

うーん。結構、面白がるとは思います。工夫があるから。

──工夫が重要な要素だと。

僕はアイデアを考えるのが一番好きなんです。たとえば、囲碁や将棋といったゲームを初めに考えた人ってすごいなと思うんですね。別に誰でも、石ころがあって線を引いたらできるじゃないですか。「iPod」みたいに難しくないし。でも、あんなゲーム、作れないですよね。

──作れない。完ぺきなバランスですから。

でも、あれを作った人は人間なんですよね。神様じゃないから。ということは、自分も頑張れば作れるんじゃないかなあ、と思う。そういう創意工夫にこそ、本物の価値がある。

将来の野望は、後世に残る啓蒙書を書くこと

──将来的に何を作りたい、という野望はありますか。

野望は、ジーパンとか、コカ・コーラとか、ああいうのを超えたいですね。まあ、将棋は難しいかも。

本は100万部超えのベストセラーを書いても、残ることは残りますが、せいぜい10年、20年、100年のものだし。でも、アイデアって永久に残るじゃないですか。何かそういうものを考えたいですねえ。別にそれはコンセプトでもいいんです。「社会主義」とかいったコンセプトでも。そういうのって、ワクワクしません?

──ワクワクします。

マルクスという人がいなかったら、ソ連もなかったし、戦争も起きなかったかもしれない。あ、いなかった方がよかったかもしれないですけど……。とにかく、新しいことを言うのって、ワクワクしますよね。ニーチェなんかも、一人だけキリスト教批判をしたわけで。そういう新しいものを見つけ出したい!という野望です。

だから、「啓蒙書」って憧れますねえ。それを目指さないと、物書きとしてウソだなって気がします。ちょっと大それた目標ですけど。

──いえいえ。『ハイコンセプト』のダニエル・ピンクや、トム・ピーターズもそうだし、多くの著者はそれを狙ってますよね。読者はものすごく広く、かつ新しい概念。『ロングテール』や『フリー』もそうですよね。

そうそう。現象に名前をつけて解釈するという。大宅壮一もそうですよね。「一億総白痴化」という名前をつけた。「ああ、日本人がどうもバカになってるような気がする。なんなんだ、なんて言えばいいんだ、この現象は」って、みんなが思ってるわけです。そこで「一億総白痴化」って言われると納得する。

──なるほど、なるほど。

堺屋太一の「団塊の世代」もそうですよね。「ああ、この世代の人間が、やたら固まっているけど、なんて言えばいいんだろう」ってみんなが思っていて、「団塊の世代」と名づけた。

──ははは。

「団塊」というのは科学用語で、「クラスター」の和訳です。もともと普通に使われる言葉ではなかったのを堺屋太一が取り上げた。こういうの、ホントに憧れます。発明したり、新しいモノを作ったり、新しいコンセプトを作ったり。

──ああ。

野口悠紀雄さんの『「超」整理法』もそうですよね。新しいアイデアです。別に封筒なんて、誰でも持ってるし、書類もみんなあるけど、誰もあのやり方を思いつかなかった。やってる人もいたけど、それをメソッド化できなかった。それをメソッド化する。これ、すごく興奮しますよ。そういう野望があります。

──新しいコンセプトに基づいて啓蒙書を出す、と。

そうです。後世に残るものを出したい。それは新しいことじゃないといけない。少なくとも、新しく見えるものじゃないといけない。しかもそれが、読者にメリットがないといけないから、単純に自己満足ではダメなので、難しいですね。新しい世界を切り拓いたり、メガネをかけると世界が違って見えるよ、という。

──今だと、誰が近い位置にいますかね?

今、そのポジションは結構、空席だと思います。司馬遼太郎がいないでしょ。司馬遼太郎は、明治維新というのは要するにこういうことだったんだよ、日清戦争というのはこういうことだったんだよ、ということを言った人ですよね。歴史とはこういう意味があるんだよ、日本っていうのはこうなんだよって言える人だった。今、空席ですよね。…たぶん、近いのは内田樹さんかな。

──そうですね。内田樹さんがパッと思いつく。

たしか、本の中でも書かれていた気がします。ザクッとしたことを言い切る人が今、必要だって。

──ええ、ちょっといい加減でもいいからザクッと(笑)。

いい加減でもいいんですよ。議論が深まるのであれば。

知識より「跳躍力」が必要

──啓蒙書を目指すときに、やっぱりバックグラウンドや足腰の強さみたいなものが必要ですよね。司馬遼太郎さんもそうだし、堺屋太一さんもそうだし、すごいバックグラウンドがある中で、ポンと新しい何かが出るんでしょうか。

バックグラウンドも必要ですけど、バックグラウンドがある人って世の中にいっぱいいるんですよ。大学教授なんかで司馬さんより本を大量に読んでる人はいると思います。

でも、それ以上に「跳躍力」が必要だと思うんです。「オレ、いっぱい知ってるよ」って、知識の量を威張ってもしょうがないですから。自分の新しいアイデアを作らないといけないわけで、そういう意味では発想力の方がむしろ必要かも。「これとこれは似てる」とか。比喩表現の能力もいるでしょうね。

──たしかに。

バックグラウンドはないよりあった方がいいけれども、あったらあったで、ありすぎると邪魔になるような気もします。それに、今の人って、知識の量は不足してないと思うんですよ。

昔の人は、本は教会に1冊しかなかったりして、それを読める人も少なかったわけですが、それなのに歴史上にいい本がたくさん残っていますよね。今はめちゃくちゃたくさん本がありますが、それでなにか新しい本が作れているかというと、作れていないような気がしますし。そう考えると、そんなに大量のインプットはいるのか、という疑問はありますね。

──なるほど。

でも、僕はしますけどね、それでも大量のインプットを。

──そうですよね。

今のところ、いるかいらないか分からないから。でも、頭のどこかでいらないような気もします。発想力があれば。

夢にまで企画が出てきたら出口は近い

──発想力を身につけるにはどうしたらいいでしょう? 多くの人が悩んでいると思います。

僕の場合は、寝ても醒めても考え続けることです。夢に企画のことが出てきて、うなされるぐらい。夢に出てくると、あ、そろそろできるぞ、終わりが近いなと思う。

──ははは。

寝汗ベッタリで目が覚めたりすると、もう出口は近いなっていう感じがして、うれしくなります。

──じゃあ、この新刊もかなり寝汗をかきました?

後半はそうですね。最初の項目出しは、頭の中にすでにあるものでパーッと書いていく感じで。この本は最初に項目を出しすぎたので、後で削ったり、まとめたり、系統立てたりするのが大変でした。いろいろあって、73項目になりました。

──結構、ページ数がありますもんね。

ネタとしては面白いんだけど、その効果をうまく説明しづらいみたいなものがいっぱいあったので、それをどう説明したらいいのかなあと。そのあたりに苦労しました。

発想力を高めるための知識は、別に専門的じゃなくて構わないと思います。簡単な知識、表層的な知識でいい。

『下流社会』を書いた三浦展さんが似たようなことを書いてますけど、そういう知識をいっぱい持っておくことで、頭の中で「あれに似てる!」とか、「こう使えばうまく説明できる!」といろいろ発想できるようになる。

だから、知識はたしかにいるし、役に立つと思いますが、ただ、僕らはすでに、めちゃくちゃインプットしてますから。ネットも基本的にインプットだから、1時間見てたら1時間インプットしてることになりますし。

別ジャンルをインプットして無理矢理アウトプットする

──本はどうインプットして、アウトプットしますか。

自分が読みたいものを選んで、それを仕事に無理矢理つなげます。

たとえば、投資の本を読んで、投資について書いたら、みんなと同じになってしまいますよね。僕は投資の本は書かないですけど、仮に書くとしたら、まったく別ジャンルの本を読みますね。

好きな本を読んで、これは投資でいうと、こういうことなんじゃないかと発想する。そういうふうにした方が面白いものができると思うんです。インプットしたものを無理矢理こじつける。別に無理矢理じゃなくても、ふっと思えばそれがベストですけど。

──はい。

だから、アウトプットのために本を読むんじゃなくて、インプットしたものを無理矢理、自分に関係のあることと受け止めてアウトプットする感じ。

──最近は、あらかじめ目的を持って、つまりアウトプットを意識してインプットしろ、みたいな効率を考えた読書術が主流ですが。

でも、その方法だと、営業マンが営業スキルをアップさせるために営業本を買っちゃうわけで、それは世の営業マンがみんなやるから、差がつかないですよね。そうじゃなくて、自分が好きな普通の小説とかを読んでいて、この人間心理は営業的にこう役に立つんじゃないかとか、そういう方が貴重だと思う。

世の営業マンがその小説にめぐり合う可能性は低いし、その小説がそういう読まれ方をするのもレアケースだから、めちゃくちゃ希少性の高い営業スキルになるはずなんです。だから、差がつきますよね。

そういう観点からすると、本はアウトプットのためにインプットしない方がいいと思う。インプットしたものを無理矢理自分の仕事につなげてアウトプットした方がいい。

──そういう土壌を日々作っておくと、あるとき何かを見て、ポンとひらめく。

そう。「あ、似てる!」とか、「あれと一緒だ!」って。

──「あ、これはクラスターだ!」と、「あ、『団塊』と呼ぼう!」とか。

そうそう。堺屋太一はもともと理系だったと思うんですけど(注:東京大学工学部建築学科に進学後、同大学経済学部へ転入)、だから「団塊」って言葉を知ってたんだと思うんですね。普通は「団塊」なんて言葉、知らないですから。そんな特異な言葉を持ち出したから、新鮮だった。こんなふうに、関係のない分野のインプットが大事なんです。

──そういう意味で、たとえば量子力学って、使いたいコンセプトがいっぱいですよね。

いっぱいですね。

──「『クオンタムリープ』ってなんだーッ!?」みたいな(笑)

そうそう(笑)。ネーミングも、まったく別ジャンルから引っ張ってくるといいと思う。

この『知的生産ワークアウト』という本は、僕が所属している作家エージェント、アップルシード・エージェンシーの宮原さんの知人が「ワークアウト」って言ったんです。その方は英語がペラペラなんです。僕がタイトルをいろいろひねっていて、フィジカルで、何かこう、修行っぽいニュアンスでいいのはないだろうかと、『知的生産ストレッチ』とか、『知的生産トレーニング』とか言ってたら、英語が得意なその方がポンと出してきてくれた。雑誌の「ターザン」みたいでいいでしょう?

──そうですね。

まったく関係ないものから持ってきた方がインパクトが出るんだと思います。落語だったら三題話。俳句だと二物衝突とかありますね。まったく関係ないものをぶつけると、インパクトと余韻が生まれる。

──はい。

量子力学だっていいんですよ。アインシュタインの本を読んで、「人間関係にも引力がある」とか言いたくなるじゃないですか。

──はい、はい。

そんなもん、あるわけないんですけど、そう言った方がうまく説明できるということがある。

──そうですね。

ウソでもみんなが理解できて役に立つものの方がいい

だから、ウソでもいいんですよ。うまく伝わって受け手にメリットがあるなら。世の中には顕教と密教みたいなものがあって、密教がいくら正しいことを言ってても、誰も分からないんじゃ、しょうがないんですよ。それより間違っててもいいから、みんなが分かって役に立つものの方がいい。ウソも方便的な。

──なるほど。

僕の新刊も、わりとゲリラ的というか、あんまり正攻法じゃないことばっかり書いてます。たしかに朝早く起きて勉強したら効果があるでしょうけど、まあ、普通の人はできないし、まず続かないだろうと思うんで。正しいことというのは、みんな知っててもできないですからね。

それよりは間違ってるかもしれなくてもちゃんとできて、創意工夫の余地があって、そこそこ効果がある方がいいですから。実利ですよ、実利。

「実利」≒「面白い」である

──いくつか奥野さんのキーワードが出てきました。「実利」と「面白い」というのは、かなりニアリーイコールな感じですか。

そうそうそう。「面白い」というのは「結果が出る」ということだし、「実利」があると「面白い」んです。なぜ人はパチンコにはまるかといったら、結果がすぐ出るからなんですよ。

──ああ。

そういう面白さを感じられる仕組みを考えていくことが大事だと思います。人間、何が幸せかって言ったら、集中している時が一番幸せじゃないですか。

──そうですね。ええ。

そういうものをいつも探してます。マンガを読んでて、途中で「あ、メールしとかなきゃ」って、ふと思い出すようなマンガと、読んでたら完ぺきに自分が吹っ飛ぶマンガがある。気づいたら終わってる、そういうものを探していたいですね。マンガ然り、趣味然り。仕事然り…。

──うん、うん。

僕、最近、山登りを始めたんですけど、それもやっぱり頭の中を真っ白にしたいからで。

──山を歩いてるときって、とにかく歩いてることだけに集中しますよね。

必死だから。何も考えられない。

──考えられないですよね。

携帯も通じないから、何もできないし。

──結構、高い山に登るんですか。

いや、高くないです。500メートルぐらい。それでも十分、大冒険になります。登るっていうか、歩くっていうか、頂上まで行かないですけど。ハイキングコースとか、トレッキングコースとかです。

──じゃあ、「ワークアウト」って言葉が出てきて、これがしっくりきたのは、山登りも関係あるんでしょうか。ある種のワークアウト状態だし。

そうそう。結果が出る感じというか、効果がギッチリある感じ。ワークでアウトな感じ。

ワークでコツコツやってから、アウトに至る感じがいいですよね。「なんとかアウト」っていうと、「終わる」「突きぬける」みたいな感じ、あるじゃないですか。「やってやった」みたいな。そういう感じ。それを言語化するというのは難しいですよね。

──厳密に伝えようとすると、難しいですね。

みんな言語化してくれる人を探している

でも、なんでも言語化に成功したら、まあできたようなもんでしょうね。たとえば、小泉さんの政治とかも、まさにそれだったと思うんですよ。ぼやっとしたものを言語化するんです。「構造改革」とか、「抵抗勢力」とか、「郵政民営化」とか。

みんな、言語化してくれる人を探してるんですよ。僕も探してましたよ。「日本がなんかちょっとおかしくないかな」って思ってモヤモヤしている人は、内田樹さんの本なんかを読んで納得するんです。

──そうですね。

そういうの、大事ですよ。エンターテインメントです、一つの。

インタビュー第一回 「知的生産ワークアウト」の根底に面白さへの切迫感がある
インタビュー第三回 集中力が驚異的なアウトプットを生み出す

奥野宣之(おくの・のぶゆき)

1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社、業界紙を経て、『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)で著作デビュー。メモやノートの活用法から発想術、読書術、情報収集と活用まで、わかりやすく書き下ろした著書は若手ビジネスパーソンを中心に支持を集め、累計部数は50万部を超える。記事や著作の執筆、書評、講演活動のかたわら、独自に編み出した文章や企画を作る方法論、日常的なトレーニング法などを、仕事力アップのための「知的生産ワークアウト」として広く発信している。作家のエージェント、アップルシード・エージェンシー所属。

Ryusuke Koyama

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